きのくにフォレスター
志田 加奈子 さん
志田 加奈子 さん
千葉県から移住
農林大学校研修生
大川 朋子 さん
大川 朋子 さん
神奈川県から移住
農林大学校研修生

学生に戻り、基礎から学ぶ林業ルート

知識と技術を学ぶ林業の学校とは

林業への就業スタートの選択肢の1つに、必要な知識や技術を基礎から学ぶ育成・研修機関があります。和歌山県農林大学校林業研修部(通称「林大」)では、1年かけて林業の専門知識や技術から、経営知識までも学ぶことができます。

中学校や高校とは違い、林大の学生は年齢も性別もさまざま。10代も40代も同級生として机を並べ、林業のイロハを学びます。今回はそんな林大で学ぶきのくにフォレスターの卵として、今年入学した2人の女性をご紹介します。

志田さん・大川さんインタビュー

それぞれの「社会人→学生」への道

1人目は千葉県出身の志田加奈子さん。接客の仕事で疲れを感じていた折、テレビで見た和歌山県白浜町にある白良浜に惹かれて和歌山への移住を考えるように。そこで、東京のふるさと回帰支援センターを通じて和歌山の現地見学へ。さらにその後、「わかやま林業体感セミナー」に参加したことが後押しとなり、志田さんの「静かな環境でゆっくり暮らしたい」という田舎暮らしへの想いと「和歌山」「林業」が一気に結びつきました。

林業に関心を持った理由には、自然の中で働けるということもありましたが「特に資格を持っていなかったので、手に職をつけたかった」というのも大きかったそうです。

志田さん・大川さんインタビュー

2人目は横浜で医療関係の仕事に就いていた大川朋子さん。林大入学の前年に高野山で開かれた「わかやま林業就業サポート講習」に参加したことをきっかけに、転職を決意。最初は枝打ちや下刈りのボランティアに興味があり受講したそうですが、スギやヒノキが育つまでの長い年月や、世代を超えて木を守り育てる林業という仕事に感動。もともと「見たい、やりたい、聞きたいものは自分で確認しないと気が済まない」という性格もあり、講習受講後は持ち前の行動力で林業フォーラムやわかやま林業体感セミナーにも参加し、移住を決めました。林大入学の理由は「危険な仕事ということもあり、まず安全に働く技術をつけるために学びたい」と思ったからでした。

志田さん・大川さんインタビュー

自分のペースで一歩一歩

林大の講義は午前、午後3時間ずつ行われます。座学に実習にと、講義内容は幅広く、木を切ることだけでなく和歌山県の地形や地層、林業に関係する法律の勉強もあり、時には山ではなく海に行くことも。覚えることが多いため「頭がパンクしそう!」と志田さん。そうは言いつつも楽しんでいるのが、その表情から伝わります。

志田さんの1日は朝の講義からではなく「朝練」から。講義の前後に自主的な練習時間があり、各々のペースでチェンソーを使った伐倒練習ができるのですが、志田さんは「朝は気持ちいい。何もない状態から無心で切り始めるんです」ともっぱら朝練派なのだそう。

取材時は山を訪れて下刈りの実習を実施。最初は恐る恐る扱っていたものの、徐々に要領を掴み、順調に刈り進めていきました。

志田さん・大川さんインタビュー

視野を広げる出会いの連続

一方、「ギャップがすごくありました。林業って数学なんだって」と話すのは大川さん。木の高さを三角関数で割り出すこともあれば、算出量を計算したり、体積を求めたり、現場に至る道を検討するため等高線を出すことも。数学は苦手だと言いながらも「でも学ばなければいけないこと。大変ですが、いつも見ている自然が数字や式として出せるんだと思うと見え方が変わってきます。学ぶことがたくさんあって楽しいですよ」と笑顔で教えてくれました。そんな風に頭を使う講義もあれば、山に入って伐倒したりとさまざまな経験を積み重ねる日々に「本当に毎日新しいことに出会えるのがおもしろい。木や山だけでなく、人とのつながりがあってこその仕事。その関係性がおもしろく、視野が広がっていくのを感じています」と林業の奥深さを語ってくれました。

志田さん・大川さんインタビュー

鳥の声で目覚める里山の生活

2人はともに定住促進住宅に入居。朝は鳥の声で目をさまし、学校までは山並みを眺めながら通学しています。林大の入試の際には、小論文の試験対策のため、好きなラジオを我慢してひたすら図書館で借りた本を読んでいたという志田さんは、今では休日に散歩をしたり、家でご飯を作ったり、好きなだけラジオやDVDを楽しんだりと、田舎暮らしを満喫していた。「以前は年中無休の店で忙しく働いていたので、こんなにのんびりした生活は生まれて初めてかも?」と嬉しそうに話す姿が印象的でした。

志田さん・大川さんインタビュー

それぞれの未来と林業に想いを馳せて

「卒業後の進路はまだ考え中ですが、せっかく教わった知識と技術を生かして働けるところを探せたら。必要とされることをしながら、のんびり静かに生きていきたい」と志田さん。大川さんも「前職でリハビリの仕事をしていたので、森林と障がい者の就労や、ひきこもりからの社会復帰をつなげられたらいいなと思います。それに加えて、林業をもっと知ってもらいたいので、広報的な部分にも取り組めたら。学んで見るといろんな事業があることを知ったので、様々な事業体でインターンをしながら自分に会う林業を模索したいです」と、2人ともさまざまな未来を思い描いている最中です。

ふとした縁から和歌山で林業の世界に飛び込んだ2人。それぞれの生き様がこの先どんな風に和歌山、そして林業の未来と関わっていくのか、今から楽しみです。

志田さん・大川さんインタビュー
志田さん・大川さんインタビュー